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HSDとhEDSの違い——診断名はどう分かれるのか

この記事でお伝えすること
  • hEDSには厳密な国際基準(チェックリスト)があり、それを満たすかどうかで診断名が分かれます
  • 基準を満たさないが、関節のゆるさと症状はある——という人がHSDと診断されます
  • HSDとhEDSは重症度の順位ではありません。HSDのほうが症状が重いこともあります

hEDSとは?

「hEDSとHSD、結局どっちなの?」「診断名が違うと、何が変わるの?」——検索すればするほど分からなくなって、閉じたことはありませんか?

hEDS(過可動型エーラス・ダンロス症候群)は、結合組織の性質による症候群のひとつです。 2017年の国際分類で、診断には厳密なチェックリストが定められました。 バイトン・スコアに加えて、皮膚のやわらかさ・家族に同じ体質の人がいるか・ 慢性的な痛みや脱臼の履歴など、複数の条件を組み合わせて判定します[1]。

分かれ目はチェックリスト

このチェックリストをすべて満たせばhEDS。満たさないけれど、 関節のゆるさと症状があり、ほかの病気でも説明がつかない——という場合がHSDです[2]。 つまり2つの診断名は、症状の重さではなくチェックリストの充足度で分かれています。

重症度の順位ではない

誤解されやすいのですが、「hEDSのほうが重い」「HSDだから軽い」という関係ではありません。 HSDの人がhEDSの人と同じ、あるいはそれ以上の痛みや生活への影響を抱えていることもある、 と国際的な患者団体も明記しています[2]。診断名は整理のための棚であって、序列ではありません。

ここまで読んで、「基準を満たさなかったら、軽く見られるのでは」と心配になった方もいるかもしれません。その心配には先に答えておきます——これは序列ではありません。

日本で診断を受けるには

どちらの評価も医療機関で行われます。どの診療科に行くか・どう伝えるかは、 医療機関ガイドで順次公開します。

→ 医療機関との繋がり方(準備中)

hEDSのチェックリストには、何が入っているのか

詳細は医療機関での評価になりますが、概要を知っておくと見通しが立ちます。 チェックリストは大きく、①全身の関節過可動(バイトン・スコア)、 ②全身の結合組織の特徴(皮膚のやわらかさや伸びやすさ、ヘルニアの既往、家族に同じ体質の人がいるか、など)、 ③筋骨格系の症状(慢性的な痛みや脱臼の繰り返し)——の3ブロックで構成されています[1]。 つまり「関節が柔らかいか」だけでなく、「全身の結合組織に同じ性質が出ているか」まで見る設計です。

なぜ、わざわざ厳密な線を引いたのか

2017年にこの線引きが作られた大きな理由は、研究を前に進めるためです。 診断基準がばらばらだと、研究ごとに対象者の条件が違ってしまい、結果を比較できません。 厳密な基準でhEDSを定義し、同時に、基準から外れる人の受け皿としてHSDを作る—— 患者を切り捨てるためではなく、全員に名前と場所を用意するための再編成でした[2]。

診断名は、あとから変わることもあります

症状や所見は年月で変化するため、最初はHSDと診断された人が、再評価でhEDSの基準を満たすこともその逆もあります。 診断名が変わっても、あなたの体が急に変わったわけではありません。 過去の診察記録や検査結果は捨てずに持っておくと、再評価のときの大事な材料になります。

受診前に、準備しておくと役立つもの

hEDSの評価には家族歴や過去の症状が含まれるため、受診前のメモが効きます。 ①バイトン・スコアの自己チェック結果、②症状の年表(いつから何があったか。子どもの頃の捻挫癖や脱臼も)、 ③家族の体質メモ(柔らかい人・アザができやすい人・立ちくらみ持ちがいないか)。 この3点を紙かスマホで持っていくだけで、限られた診察時間で伝えられる情報量がまったく変わります。

ネット上では「hEDSのほうが本物」「HSDは軽症版」といった不正確な言い方も見かけますが、 国際的な患者団体も専門家も、それをはっきり否定しています。 あなたの体験の重さを、診断名のランク付けに明け渡さないでください。

この2つの名前の関係を知っておくと、ネットで情報を探すときにも役立ちます。 海外の情報はhEDSとHSDをまとめて扱っていることが多く、hEDS向けの生活の工夫の多くはHSDにも参考になります。 検索するときは両方の名前で探してみてください。

複雑な分類をここまで読み解いてきたあなたなら、診察室でも自分の立ち位置を見失わずにいられます。

この記事のまとめ

  • hEDSには厳密な国際基準があり、満たすかどうかで診断名が分かれる
  • 基準は関節だけでなく、皮膚・家族歴など全身の結合組織の特徴まで見る設計
  • HSDとhEDSは重症度の順位ではない。HSDのほうがつらい人も普通にいる
  • 診断名は再評価で変わることもある。記録は捨てずに持っておく

診断名をめぐる話は、どうしても「どちらが重いのか」「自分はどちらなのか」と不安を連れてきます。 でも思い出してください。名前はあなたの体を変えません。変わるのは、説明のしやすさと、 研究やサポートへのつながりやすさです。名前は道具——使うものであって、振り回されるものではありません。

出典
  1. The Ehlers-Danlos Society. Diagnostic Criteria for hEDS. https://www.ehlers-danlos.com/diagnosis/
  2. The HMSA. HSD diagnostic criteria. https://www.hypermobility.org/hsddiagnostic-criteria
  3. Yew KS, et al. Hypermobile Ehlers-Danlos Syndrome and Hypermobility Spectrum Disorders. Am Fam Physician. 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0415/p481