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ADHDと関節のゆるさ——「落ち着きがない」と「体がゆるゆる」は、つながっているかもしれない

この記事でお伝えすること
  • 成人ADHDの32%に全身性の関節過可動がみられました(比較群は14%)
  • 「じっと座れない」「体がクネクネする」の一部には、体の側の事情があるかもしれません
  • 多動を「性格」や「しつけ」の問題と切り分けて考える、新しい視点を紹介します

ADHD界隈で語られる「体がゆるゆる問題」

「じっと座ってるだけで、なんでこんなに疲れるんだろう」「姿勢が悪いって、また注意された」——ADHDの困りごとの中に、そんな「体の話」が混ざっていませんか?

ADHDの当事者コミュニティでは、昔から「体がゆるい」「姿勢が保てない」「気づくと何かに寄りかかっている」 という体の話が、あるある話として語られてきました。 授業中に体がクネクネする。会議でじっと座っていると、座っていること自体に消耗する。 まっすぐ立っているつもりが、いつの間にかぐにゃりと崩れている——。

この「ゆるゆる問題」は長らく名前のない体感でしたが、研究は実際に重なりを示しています。

研究が示している数字

  • 成人ADHDの人の32%に全身性の関節過可動がみられた(比較群では14%)[1]
  • ADHDを含む神経発達症のある成人では、関節過可動が50%超という報告もあります(一般人口は約20%)[2]
  • 運動の極端な苦手さ(DCD)のある子どもでは64%(比較群33%)[3]

どの研究でも、比較群の2倍以上。「ADHDと体のゆるさ」は、あるある話ではなく統計的な現実です。

なぜ「じっとしていられない」のか——体の側からの仮説

じっと座る・じっと立つは、関節がゆるい体にとって、筋肉が張りっぱなしになる高コストな姿勢です。 姿勢を変える、体を揺らす、立ち歩く——これらは、同じ筋肉の連続勤務を避ける 合理的な負荷分散になっている可能性があります。 また、体の位置情報(固有受容覚)が曖昧な体では、動くことで自分の体の位置を確かめている、という見方もあります。

もちろん、ADHDの多動すべてが体で説明できるわけではありません。脳の特性としての多動は確かにあります。 ここで言いたいのは、「落ち着きのなさ」の中に、体の事情で説明できる成分が混ざっているかもしれない—— そしてその成分は、叱っても気合いでも減らないが、環境の設計では減らせる、ということです。

ここまで読んで、「ADHDのせいだと思ってたのに、また別の問題?」とうんざりした方もいるかもしれません。増えたのは問題ではなく、打ち手のほうなんです。

この視点で、何が変わるか

  • 座る環境を変える——背もたれと肘掛けのある椅子、クッション。姿勢の維持費が下がれば、そわそわの一部は減る可能性があります
  • 「動いていい設計」にする——立ち歩ける役割、休憩の小分け、立ち作業の併用。動きを禁止するより、動きを予定に組み込む
  • ADHDの診断がある人は、体も一度チェックする——疲労や痛みを「ADHDだから仕方ない」でまとめてきた人ほど、身体側の説明と対策が見つかる余地があります

よくある質問

Q. 私は多動タイプではなく、不注意タイプのADHDです。関係ありますか?
関係ありえます。研究はADHD全体と関節過可動の関連を見ており、タイプを限定していません[1]。 不注意タイプの人でも、疲れやすさ・姿勢の崩れ・ぶつかりやすさといった形で、体の側の事情が出ていることがあります。

Q. ADHDの薬を飲んでいますが、疲れやすさは変わりません。
ありうる話です。薬が働きかけるのは脳の側で、関節のゆるさや姿勢の維持コストという体の側の支出は、 薬の守備範囲の外にあります。「薬で集中は良くなったのに、体の消耗はそのまま」という場合、 体の側を別途チェックしてみる価値があります。気になることは処方医にも相談してください。

子どものADHDと「体がゆるい」

お子さんがADHDの診断や傾向を指摘されていて、同時に「よく転ぶ」「極端に運動が苦手」「姿勢が保てない」 がある場合、運動の発達(DCD)と関節のゆるさの重なりも視野に入ります[3]。 「落ち着きのなさ」として一括りにされてきた行動の中に、体の事情の成分がどれだけあるか—— この見立てがあると、環境調整の打ち手が増えます。詳しくは 体がクネクネする・じっと座っていられないでも扱っています。

最後にひとつ。この記事は「ADHDは実は体の問題だ」という話ではありません。 脳の特性と体の特性が、同じ人の中で重なりやすい——その両方に、それぞれの対策がある、という話です。 片方だけ見てきた人が、もう半分の地図を手に入れるための記事です。

脳の特性と体の特性、二重の事情を抱えて社会を走ってきたあなたは、見た目よりずっと多くの仕事をこなしています。

この記事のまとめ

  • ADHDと関節のゆるさの重なりは、複数の研究で比較群の2倍以上と示されている
  • 「じっとしていられない」の一部は、姿勢維持の高コストと位置情報の曖昧さという体の事情かもしれない
  • 体の成分は、叱責では減らないが環境の設計では減らせる
  • ADHDの診断がある人こそ、関節のゆるさの自己チェックをしてみる価値がある
出典
  1. Glans M, et al. Association between adult ADHD and generalised joint hypermobility. 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9471100/
  2. Csecs JLL, et al. Joint Hypermobility Links Neurodivergence to Dysautonomia and Pain. Front Psychiatry. 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8847158/
  3. Jelsma LD, et al. The relationship between joint mobility and motor performance in children with and without DCD. BMC Pediatr. 2013. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3605363/