やってはいけないこと——「体が硬いから」とストレッチを頑張る前に
- 関節がゆるい人にとって、可動域をさらに広げるストレッチは裏目に出ることがあります
- 「体がこわばる=硬い=伸ばすべき」は、この体では勘違いであることが多いです
- 「ヨガやったら?」という善意のアドバイスへの、現実的な受け答えも用意します
「こわばっているから、硬い」の勘違い
「体が硬いからだと思って、ストレッチを頑張ってきた」「ほぐしてもほぐしても、すぐ戻る」——その繰り返しに、心当たりはありませんか?
肩も背中もガチガチにこわばっている。だから自分は体が硬い。だからストレッチで伸ばそう—— この三段論法、とても自然に見えますが、関節がゆるい体では最初の段から間違っていることがあります。
このサイトで繰り返し見てきたとおり、そのこわばりは、ゆるい関節を守るために 筋肉が張り続けている「守りの緊張」である可能性があります[1]。 守りの緊張を強いストレッチではがすと、一時的にほぐれた感じはしても、 関節の守りが薄くなり、体はまた急いで固め直す——いたちごっこになりがちです。
可動域を「さらに広げる」ことのリスク
もともと可動域の広い関節を、端からさらに押し広げる方向の負荷は、 靭帯への負担になります。靭帯は筋肉と違って、一度伸びると元に戻りにくい組織です。 国際的な患者団体も、過可動のある人の運動については「可動域の端まで行かないこと」を 一般的な注意として挙げています[2]。 柔らかさを披露するポーズが決まるたび、靭帯は静かに請求書を書いています。
誤解のないように——体を動かすこと自体は大切ですし、 痛みのない範囲の軽い運動やウォームアップまで否定する話ではありません。 問題は「可動域の限界に挑む」方向の負荷です。
「ヨガやったら?」と言われたときの返し方
疲れや痛みの話をすると、善意の人は高確率でヨガとストレッチを勧めてきます。 悪気はありません。普通の体には良いアドバイスだからです。 消耗しない返しを2つ用意しておきましょう。 「関節がゆるい体質で、伸ばしすぎると逆に悪くなるタイプなんです」——これで大半は終わります。 食い下がられたら「医師に相談しながらやってます」——事実でなくても、そうする予定があれば嘘ではありません。 あなたの体質の説明会を、毎回開く義務はありません。
ここまで読んで、「今までの努力は逆効果だったの?」とショックを受けた方もいるかもしれません。自分を責めないでください。知識の問題であって、あなたの落ち度ではないんです。
代わりに何をすればいいのか
- 温める——こわばりへの対処として、強く伸ばすより安全な選択肢です
- 軽く動かす——散歩や、痛みのない範囲で関節を動かすこと。固まり防止と血流のために
- 支える筋肉を育てる——伸ばすのではなく、安定させる方向。ただし自己流の高負荷トレーニングはケガの元なので、理学療法士など専門家に「関節がゆるい体質」と伝えて相談を[1]
すでにヨガやダンスを楽しんでいる人は、やめる必要はありません。 「端まで行かない・痛みが出たら中止・指導者に体質を伝える」の3つをルールにしてください。
マッサージ・整体は、どうなのか
もみほぐしで一時的に楽になるのは、過緊張の記事で見たとおり、 悪いことではありません。「定期メンテ」として使うぶんには選択肢のひとつです。 ただし2つだけ注意を。ひとつ、施術者に「関節がゆるい体質」と必ず伝えること。 強い圧や、関節を大きく動かす手技は、この体には合わないことがあります。 ふたつ、関節を勢いよく鳴らす・強くひねる系の施術は慎重に。 ゆるい関節は、普通の体より大きく動いてしまうからです。 痛みが続く場合は、民間の施術よりまず医療機関(整形外科・理学療法)で評価を受けてください。
ここまでの話をひっくり返すようですが、いちばん危ないのは「何もかも怖くなって動かなくなる」ことです。 動かない期間が長いほど、支える筋肉は弱り、関節の守りはさらに薄くなります。 禁止リストは「動かない理由」ではなく、「安全に動くための地図」として使ってください。
そして、これまで良かれと思ってストレッチを頑張ってきた自分を責めないでください。 「体が硬いなら伸ばす」は世の中の標準装備の知識で、あなたはそれに真面目に従っただけです。 知識が更新されたら、やり方を更新する——それができる人は、頑張り方を間違えない人です。
良くなりたくて、頑張る方向を探し続けてきた——その姿勢そのものは、一度も間違っていません。変わったのは地図のほうです。
この記事のまとめ
- こわばりは「守りの緊張」かもしれない。強いストレッチではがすと、いたちごっこになる
- 靭帯は伸びると戻りにくい。可動域の端に挑む負荷は、この体では裏目に出やすい
- 温める・軽く動かす・支える筋肉を育てる、が代わりの方向。専門家には体質を伝える
- 善意のヨガ推しには「伸ばしすぎると悪くなる体質なんです」の一言でいい
- Yew KS, et al. Hypermobile Ehlers-Danlos Syndrome and Hypermobility Spectrum Disorders. Am Fam Physician. 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0415/p481
- The HMSA. Hypermobility information. https://www.hypermobility.org/
- College Hill Pilates and PT. EDS and Tight Muscles. 2020. https://www.collegehillpilatespt.com/2020/05/21/eds-and-tight-muscles-if-my-joints-are-so-loose-why-do-i-feel-so-tight/