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検査で何が分かるか——「異常なし」は「何もない」ではない

この記事でお伝えすること
  • 「異常なし」は「何もない」ではなく、「調べた病気ではなかった」という前進です
  • HSDは血液検査や画像に「写らない」タイプの診断で、診察と問診で評価されます
  • 異常なしと言われたあとに、どう進めばいいかの道筋をまとめます

「異常なし」と言われて、絶望したことがある人へ

「異常なしです、と言われた瞬間の、あの気持ち」「喜ぶべきなのに、落ち込んでしまった」——その感情に、心当たりはありませんか?

勇気を出して受診して、血を採って、画像も撮って——結果は「異常なしですね」。 安心するどころか、落ち込んだ経験はありませんか。 「じゃあこのつらさは何なの」「やっぱり気のせいってこと?」と。

先に結論を言います。「異常なし」は「あなたに何もない」という意味ではありません。 「今日調べた範囲の病気は、否定できた」という意味です。これは失敗ではなく、消去法の1ステップです。

除外診断という考え方

HSDの診断は、「これがあればHSD」という決定的な検査値で決まるのではなく、 ①関節のゆるさの評価(バイトン・スコア)、②症状の確認、 ③症状を説明できるほかの病気がないことの確認——の3段階で行われます[1]。 この③が「除外診断」です。

たとえば血液検査では、関節リウマチなどの炎症性の病気、甲状腺の病気、貧血など、 「似た症状を出すほかの原因」がないかを調べます。画像検査では、関節の構造的な損傷を確認します。 これらが「異常なし」なら、容疑者リストが短くなった——つまり、HSDの診断に一歩近づいたことになります。

HSDは、検査に「写らない」タイプの診断

ここが大事なところです。関節のゆるさは、レントゲンにも血液にも写りません。 靭帯のやわらかさを数値で出す検査は、一般の診療にはないのです。 だからHSDの評価は、診察室での動きの確認(バイトン・スコア)と、 丁寧な問診——つまりあなたが持っていく情報——が主役になります[1]。

「検査で異常がない=病気ではない」という図式は、HSDのような臨床評価型の診断には当てはまりません。 検査が白でも、診断がつくことは普通にあります。

ここまで読んで、「じゃあ検査なんて受けても無駄?」と思った方もいるかもしれません。逆なんです。「白」の積み重ねだけが、本題への扉を開けてくれます。

「異常なし」のあとの道筋

  • 結果を必ずもらって保管する——「どの検査で何が否定されたか」は、次の科での説明を一気に短縮します
  • 「では、この症状は何が考えられますか」と聞く——異常なしの報告で終わらせず、次の仮説を一緒に考えてもらう質問です
  • 関節過可動の評価を具体的に求める——「関節が全身的にゆるく、バイトン・スコアのセルフチェックで◯点でした。過可動の観点から診ていただけますか」と、こちらから名前を出して構いません
  • 一度で諦めない——HSDは医師によって詳しさに差がある領域です。セカンドオピニオンは、わがままではなく通常の医療の使い方です

よく出てくる検査が「何を見ているか」ざっくり辞典

  • 炎症の数値(CRPなど)——体の中で炎症が起きていないかの目安。関節リウマチなど炎症性の病気との切り分けに使われます
  • リウマチ関連の抗体検査——免疫が自分の体を攻撃するタイプの病気ではないかを確認します
  • 甲状腺の検査——強い疲労やだるさを説明しうる、ホルモンの病気の確認です
  • 貧血の検査——立ちくらみや疲労の、もうひとつの定番の原因の確認です
  • レントゲン・エコーなど画像——関節や組織の構造的な損傷がないかを見ます

どれも「HSDかどうか」を直接見る検査ではなく、「ほかの原因ではないこと」を確かめる検査です。 だから全部白でも、話は終わりではなく、むしろ本題(関節過可動の評価)に入れる状態になった、ということです。

検査結果の紙は、その日のうちにスマホで撮影しておくのがおすすめです。 紙は失くなりますが、写真は残ります。数年後に別の症状で受診したとき、 「あのとき何が白だったか」を見せられるのは、思っている以上に強い持ち札です。 結果をもらえなかった場合も、「コピーをいただけますか」の一言で、たいてい出してもらえます。

なお、検査のたびに「今回こそ何か見つかってほしい」と願ってしまう自分に、罪悪感を持たないでください。 病気になりたいのではなく、説明が欲しいだけ——その願いは、長く説明のない症状と暮らしてきた人の、 ごく自然な心の動きです。説明を求めることは、健康を望むことと矛盾しません。

「異常なし」に何度も肩を落として、それでも原因を探し続けてきた——あなたのその直感は、正しかった可能性があります。

この記事のまとめ

  • 「異常なし」=「調べた病気ではなかった」。除外診断の1ステップとして前進している
  • HSDは血液や画像に写らず、診察と問診で評価される。検査が白でも診断はつきうる
  • 検査結果は保管して持ち歩く。科をまたいで効く財産になる
  • 「ではこの症状は何が考えられますか」の一言で、診察は報告会から作戦会議に変わる
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出典
  1. Yew KS, et al. Hypermobile Ehlers-Danlos Syndrome and Hypermobility Spectrum Disorders. Am Fam Physician. 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0415/p481
  2. The Ehlers-Danlos Society. Diagnostic Criteria. https://www.ehlers-danlos.com/diagnosis/