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「靭帯がゆるい」とはどういうことか——生まれつきのコラーゲンの性質

この記事でお伝えすること
  • 関節のゆるさの正体は、靭帯の材料である「コラーゲン」の生まれつきの性質です
  • 家族の中に同じ体質の人がいることが多いのは、このためです
  • 「体質だから仕方ない」ではなく、「材料が分かったから守り方が決まる」が正しい結論です

靭帯は、コラーゲンでできたベルト

「なんで私だけ、こんな体なんだろう」「親のせい?それとも育ち方?」——原因探しで、自分や家族を責めてきませんでしたか?

関節を固定している靭帯は、コラーゲンという繊維でできています。 コラーゲンは体じゅうの結合組織の主材料で、例えるならロープの繊維のようなもの。 この繊維の編み方や成分には生まれつきの個人差があり、 人よりよく伸びるタイプの人がいます[1]。それが「関節がゆるい」の正体です。

「なんで私だけこうなんだろう」への答え

コラーゲンの性質は遺伝の影響を受けます。だから、親子や兄弟で 「みんな捻挫しやすい」「母も立ちくらみ持ち」ということがよく起きます[1]。 あなたが何かを間違えたからでも、生活習慣がダメだったからでもありません。 生まれたときから、材料が少し違ったのです。

なお、hEDS(過可動型エーラス・ダンロス症候群)やHSDについては、 原因になる遺伝子はまだ特定されていません[2]。 「遺伝子検査で白黒つく」段階にはない——ここも正直にお伝えしておきます。

コラーゲンは関節だけの話ではない

同じコラーゲンが、皮膚・血管・内臓の支えにも使われています。 皮膚がやわらかい、アザができやすい、立ちくらみが多い—— 関節と関係なさそうな症状が一緒に起きるのは、材料が全身で共通だからです[1]。

ここまで読んで、「生まれつきなら、どうしようもないってこと?」と落ち込んだ方もいるかもしれません。逆なんです。材料が分かったからこそ、守り方が決められます。

材料が変わらないなら、何を変えるのか

コラーゲンの性質そのものを変える方法は、今のところありません。 変えられるのは、ゆるい靭帯のまわりを支える筋肉と、体の使い方、そして予定の組み方です。 このサイトのペーシングのコーナーで順次扱っていきます。

コラーゲンは、体のどこにでもいる

体の中でコラーゲンが支えている場所を挙げてみると、関節の話だけではないことが分かります。

  • 皮膚——やわらかい、よく伸びる、傷あとが残りやすい人がいます
  • 血管——まわりの支えがやわらかいと、アザのできやすさや立ちくらみに関わります
  • 内臓の支え——胃腸の動きや、ヘルニアのなりやすさに関係することがあります

「関節の病気」と考えると説明がつかない症状の数々が、「全身の材料の個性」と考えると一本の線でつながる—— これがHSDを理解する上でいちばん大事な視点のひとつです[1]。

「コラーゲンを食べればいいの?」という疑問

残念ながら、食べたコラーゲンはそのまま関節に届くわけではありません。消化の過程でアミノ酸に分解され、 体の中で作り直されます。そして、どう作るかの設計図は遺伝子が持っているので、 食事やサプリメントで生まれつきの設計が書き換わることはありません。 「これを飲めば治る」という宣伝には、距離を置いてください。 バランスのよい食事が体の維持に大事なのは、もちろんその通りですが、それは魔法ではなく土台の話です。

家族と、この話をするときのヒント

遺伝の話は、犯人探しにしないことが何より大事です。「誰に似たのか」ではなく、 「家系の体質がやっと分かった」と捉えると、景色が変わります。 お母さんの長年の立ちくらみ、きょうだいの捻挫癖、自分の疲れやすさ—— バラバラに見えていた家族の悩みに、共通の説明がつくかもしれないのです。 分かれば、家族ぐるみで備えられます。体質の発見は、責任ではなく資産です。

よくある質問:遺伝子検査で分かりますか?

現時点では、hEDSとHSDについては原因遺伝子が特定されていないため、 遺伝子検査で白黒をつけることはできません(ほかのタイプのEDSには遺伝子が分かっているものもあります)。 診断は、診察と問診とチェックリストによる臨床評価で行われます。 「検査で一発判定」を期待して空振りしないよう、先に知っておいてください。

原因の分からない体と何十年も付き合って、それでもここまで調べに来た。あなたの探究心は、もう対策の入口に立っています。

この記事のまとめ

  • 関節のゆるさの正体は、靭帯の材料(コラーゲン)の生まれつきの性質
  • 同じ材料が皮膚・血管・内臓も支えているため、一見バラバラな症状に共通の説明がつく
  • 家族で似るのは遺伝の影響。誰のせいでもなく、家系の体質を知れたことはむしろ資産
  • 食事やサプリで設計図は変わらない。変えられるのは支える筋肉と体の使い方

「なんで私だけ」という問いに、この記事は「材料が少し違ったから」と答えました。 次の問いは「では、どう守るか」です。その答えはペーシングのコーナーで、具体的な方法として積み上げていきます。

出典
  1. Yew KS, et al. Hypermobile Ehlers-Danlos Syndrome and Hypermobility Spectrum Disorders. Am Fam Physician. 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0415/p481
  2. The Ehlers-Danlos Society. Diagnostic Criteria. https://www.ehlers-danlos.com/diagnosis/