長く立っていられない——「体力がなさすぎ」ではないかもしれない
- 「じっと立つ」は、関節がゆるい人にとって二重にコストの高い姿勢です
- 筋肉が支え続けることと、血液が下半身に溜まること。理由は2つあります
- 「体力がなさすぎ」と自分を責める前に、立ち方と環境を変える手があります
行列と立ち話が、いちばんつらい
「行列に並ぶと、決まって具合が悪くなる」「朝礼が地獄だった」「若いのに、って目で見られる」——覚えはありませんか?
歩くのは平気なのに、じっと立っているのがつらい。行列、満員電車、立食パーティー、朝礼。 「なんでみんな平気なの? 私、体力なさすぎでは」と思ってきたなら、 それは体力の問題ではない可能性があります。
理由1:筋肉が、休みなく支えている
立位の維持は、靭帯と筋肉の共同作業です。靭帯がゆるい体では筋肉の負担割合が大きく、 じっと立っている間も筋肉は張りっぱなしになります[1]。 歩くほうが楽なのは、動きのリズムで筋肉に緩む瞬間があるからです。
理由2:血液が、下半身に溜まる
立っている間、血液は重力で脚に集まります。血管まわりの支えがやわらかい体質だと 血液が戻りにくく、脳への血流が減って、めまい・気持ち悪さ・頭のもやもやが出ます[2]。 じっと立つのは、筋肉と循環の両方に負担が集中する姿勢なのです。
ここまで読んで、「みんな我慢してるのに、自分だけ座るなんて」と思った方もいるかもしれません。燃費の違う体に同じ我慢を課すほうが、本当は不公平なんです。
今日からできる工夫
- 壁・手すり・柱に寄りかかる(外部の支えは正当な装備です)
- その場で足踏み・かかと上げをして、脚の筋肉のポンプを動かす
- 着圧ソックスで血液の停滞を減らす
- 「座れる選択肢」を先に設計する。列に並ぶ用事は空いている時間帯に
「立つ文化」との付き合い方
朝礼、式典、満員電車、人気店の行列、スタンディングのライブ—— 社会は思った以上に「じっと立てること」を前提に作られています。 この前提に体が合わないとき、取れる戦略は2つです。 ひとつは立つ時間そのものを設計で減らすこと(空いている時間帯を選ぶ、指定席を取る、並ぶ役割を分担する)。 もうひとつは、立つあいだの支出を減らすこと(壁や柱に寄りかかる、足踏みでポンプを回す、重心をこまめに移す)。 どちらも「ずるい」ではなく、燃費の違う車の運転方法です。
周囲へのひとことの例
「立ちっぱなしだと具合が悪くなる体質で」——この一言だけで足ります。病名も検査結果も要りません。 言うタイミングは、その場でつらくなってからより、始まる前が楽です。 先に伝えておくと、途中で座ることへの心理的なコストがぐっと下がります。 伝えた結果ちょっと驚かれても、倒れてから運ばれるより、お互いにずっと安上がりです。
それでも立つ日の、前後の設計
どうしても長く立つ日(式典、ライブ、イベント)は、当日だけでなく前後で設計します。 前日はよく寝て、当日は水分と塩分を先に入れ、着圧ソックスという装備を使い、 終わったあとに回復の時間を予定として確保しておく。 「立つ日」を点ではなく線で計画すると、翌日のダメージがまるで違います。
気をつけたい立ち方のクセ——「ひざロック」
関節がゆるい人の多くが、立つときに無意識で「ひざを反らせて関節に寄りかかる」立ち方をしています。 筋肉を使わずに立てるので一見省エネですが、反った関節に体重を預け続けるため関節への負担が大きく、 脚の血流も滞りやすくなります。 気づいたら、ひざをほんの少しだけゆるめる——ピンと伸ばし切らない立ち方を試してみてください。 最初は逆に疲れますが、それは今まで関節に押しつけていた仕事が筋肉に戻ってきた証拠です。 無理のない範囲で少しずつで大丈夫です。
なお、「若いのに」「鍛え方が足りない」という外野の声には、根拠がありません。 立位の維持コストは体のつくりで決まる部分が大きく、年齢や鍛錬の問題に単純化できないことは、 ここまで読んだあなたがいちばんよく知っているはずです。外野の声より、自分の帳簿を信じてください。
座れる場所を探す目も、だんだん育ちます。駅のベンチ、店の待合席、壁ぎわ、段差—— 街の見え方が「立つ前提の地図」から「座れる場所の地図」に変わってくれば、外出の設計はもう上級者です。
座りたい気持ちを押し殺して立ち続けてきた日々の分、これからは設計で楽をしていい。あなたには、その権利があります。
この記事のまとめ
- じっと立つのは、筋肉の維持費と血液の滞留が重なる、二重にコストの高い姿勢
- 歩くほうが楽なのは、動きのリズムで筋肉が緩む瞬間があるから
- 寄りかかる・足踏み・着圧・座れる設計は、ずるではなく燃費の違う体の運転方法
- 先に一言伝えておくと、当日座ることの心理コストが下がる
このサイトでは、HSDかもしれない方の人生が良くなるコンテンツをお届けしています。
もしかして自分もそうかも?と思った方は、まずは自分の関節のゆるさを確かめるところからチェックしてみてください。
- College Hill Pilates and PT. EDS and Tight Muscles. 2020. https://www.collegehillpilatespt.com/2020/05/21/eds-and-tight-muscles-if-my-joints-are-so-loose-why-do-i-feel-so-tight/
- Csecs JLL, et al. Joint Hypermobility Links Neurodivergence to Dysautonomia and Pain. Front Psychiatry. 2022. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8847158/