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よく物にぶつかる・よく転ぶ——「そそっかしい性格」ではないかもしれない

この記事でお伝えすること
  • よくぶつかる・よく転ぶ背景に、体の位置情報(固有受容覚)の精度の低さがあることがあります
  • 関節がゆるい人はこの感覚が曖昧になりやすいことが、研究で示されています
  • 「そそっかしい私」を直そうとするより、部屋と動線を直すほうが効きます

覚えのないアザは、どこから来るのか

「いった……またぶつけた」「このあざ、いつできたんだろう」——お風呂で覚えのないあざを見つけること、ありませんか?

ドアの角に肩をぶつける。机の脚に小指をぶつける。段差のないところでつまずく。 お風呂で見つける、覚えのないアザ——。 「私って本当にドジ」と笑ってきた人、それは性格ではないかもしれません。

体の「位置情報」が粗い、という可能性

自分の肩がいまどこにあるか、足がどこまで上がっているか。 その位置情報を脳に送っているセンサー(固有受容覚)は、関節まわりの組織に埋まっています。 関節がゆるい人はこの読み取りが曖昧になりやすいことが、複数の研究で示されています[1]。

地図が粗いカーナビで運転すれば、たまに縁石に乗り上げます。 それは運転手の性格の問題ではありません。 さらに、アザができやすい体質(血管まわりの組織のやわらかさ)が重なると、 小さな接触でも痕が残ります[2]。

ここまで読んで、「部屋を変えるなんて大げさでは」と思った方もいるかもしれません。何年も自分を変えようとして変わらなかったなら、次は環境の番なんです。

自分を直すより、部屋を直す

  • よく通る動線から物を減らす。家具の角にはコーナーガード
  • 床に物を置かない仕組みにする(収納を動線の外へ)
  • 急いでいるときほどぶつかります。「間に合う設計」(早めに出る・詰め込まない)が実は一番の対策です
  • 夜の動線に足元灯。暗いと位置情報の補助(視覚)が使えなくなります

なぜ「急いでいるとき」ほど、ぶつかるのか

移動の速度が上がると、同じ位置情報の誤差でも、ぶつかるまでの余裕時間が短くなります。 さらに急いでいるときは、頭が目的地のことでいっぱいで、体の手動監視に回す注意が残っていません。 つまり「慌てんぼうだから、ぶつかる」のではなく、「急ぐと、誤差を補正する時間と注意が足りなくなる」のです。 対策はシンプルで、5分早く出ること。「余裕」はこの体にとって、性格のゆとりではなく安全装備です。

子どもがよくぶつかる・よく転ぶ場合

お子さんにアザが多い、よく転ぶ、という場合も、叱る前に体のつくりの可能性を思い出してください。 「ちゃんと前を見なさい」で直らないのは、本人の態度の問題ではないかもしれません。 また、アザの多い子は、学校や周囲から思わぬ誤解を受けることがあります。 体質としてアザができやすいことを、連絡帳や面談で先生に伝えておくと、無用な心配やすれ違いを防げます。 子どもの受診の目安については、医療機関コーナーで順次扱います。

家の中の「ぶつかりマップ」を作る

1週間だけ、ぶつかった場所をスマホにメモしてみてください。 たいてい、同じ3箇所くらいに集中していることが分かります。 全部の家具を動かす必要はありません。上位3箇所だけ対策すれば、日々のダメージの大半が消えます。 机の角にコーナーガード、通り道の床から物をどける、夜の動線に足元灯—— 自分を訓練するより、家を訓練するほうが早いのです。

外出先での小さな工夫

家の外は家具を動かせないので、こちらの動き方を設計します。 カバンは体の前に抱えると、体の幅の感覚がつかみやすくなり、人にぶつけることも減ります。 両手がふさがる持ち方(紙袋2つなど)は補正力が落ちるので、リュックで両手を空ける。 混雑のピーク時間を避けるのも、立派な対策です。どれも「気をつける」より確実に効きます。

ちなみに、ぶつけた側の「物」を責める人がいますが(机の角に悪態をつく等)、あれは実は正しい反応です。 この体にとって環境は共同作業の相手。相手側を整えるのは、八つ当たりではなく交渉です。 机の角にガードをつけた日から、机との関係は良好になります。

「ドジだね」と笑われながら、自分でも笑いながら、本当は少し傷ついてきた——そのあざの数だけ、あなたは動き続けてきた人です。

この記事のまとめ

  • よくぶつかる背景に、体の位置情報(固有受容覚)の粗さがあることがある。性格ではない
  • 急ぐほどぶつかるのは、誤差を補正する時間と注意が足りなくなるから。5分の余裕は安全装備
  • 自分を直すより部屋を直す。ぶつかりマップで上位3箇所だけ対策すれば大半が消える
  • 子どものアザや転びやすさも、叱る前に体のつくりの可能性を

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もしかして自分もそうかも?と思った方は、まずは自分の関節のゆるさを確かめるところからチェックしてみてください。

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出典
  1. Smith TO, et al. Do people with benign joint hypermobility syndrome have reduced joint proprioception? Rheumatology. 2013. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23728275/
  2. Yew KS, et al. Hypermobile Ehlers-Danlos Syndrome and Hypermobility Spectrum Disorders. Am Fam Physician. 2021. https://www.aafp.org/afp/2021/0415/p481